──……本当はずっと、泣いて叫んで、喚き散らしたかった。


結婚しているとは言っても、私は男の人を遥しか知らない。


恋愛初心者である私にとって今回の遥の件は、どう対応したらいいのか全く分からない出来事で、それでも泣いてしまったら負けのような気がして、素直に自分の中の悲しみを受け入れる事が出来ないでいた。


……いや、違う。
『負け』なんじゃない。

このまま悲しみを受け入れたら、


───遥が、離れて行ってしまうような気がするからだ。


私は自分に自信があるわけじゃない。

遥の強烈な想いに、胡座をかいていただけだ。

遥が私を手放してしまったら、私に遥を引き止められる術はない。



それを認めてしまうのが、怖かったんだ。



だからこんな幼稚な方法でしか、遥の気を引く事が出来ない。

情けないと分かっているのに、冬香さんより想われているんだって、今の一番は私なんだって安心したくて、気を張って堪えていたけれど。

でももうとっくに、私の心は限界を迎えていて。
優香の一言で、気持ちがどんどん溢れかえってくる。


「う……うわあぁぁぁぁぁっ遥のバカァァァァァーーッ」


私が突然叫び出したので、優香がビクッと肩を揺らして大きく目を見開いた。


「えっ、ちょっ、夏美っ、ストップ!!!」