……遥が、迎えに来る。

でも、それって冬香さんとの約束は……どうするんだろう?

少しだけ、私の方を優先してくれたんじゃないか、なんて思えて嬉しいと思ってしまった自分がいるけれど、そんなものはどうせ一時的なものだ。

今、このまま帰ってしまっても、きっと何も変わらない。

でもだからって、何か二人の決定的な証拠みたいな物がなければ、本当の事を言ったとしても遥ははぐらかすだけに決まっている。


結局は、同じ思考の堂々巡りで。


……やっぱり今日は、帰りたくない。
考える時間が欲しい。

そう思った私は、意を決して立ち止まり優香を見た。


「優香、ゴメン。私、今日はもう帰るよ」


私の言葉に、優香が立ち止まって振り返り、盛大な溜息を吐いた。


「バッカじゃないの。帰すわけないでしょ。ここまで巻き込まれたんだから、話を聞くまでは帰すわけないじゃん。……っていうか、何があったのか知らないけど、夏美、いい加減泣けば?なんか見ててイライラする」


え?と、驚いて目を見開くと、優香が目を細めて睨んできた。


「アンタ見てると、必死に泣きたいのを怒りの気持ちに転換して、我慢してるようにしか見えない。泣いたからってどうなるわけじゃないってのは分かるけど、泣くのもストレス発散になるんだよ?」


一瞬、───心臓がドキリと跳ねた。

優香のその言葉が、私の心の蓋をこじ開けてしまったかのように、一気に目の淵に涙が溜まってくる。