GPSも盗聴器も、どちらも遥ならあり得そうで。
けど、前にあれだけ二度としないでって話したはずなのに……。

基本的に遥は、私が本気で嫌がる事は二度しない人だけれど、元々ストーカー気質のある人だ。

私にバレないようにしている可能性は高い。


悶々とした気持ちを抱えながら、電話で話している優香を見ると、彼女にしては珍しく真剣な表情だ。


「あ、ハイ。一緒にいますけど……、あー、いえ、ちょっと待ってもらえます?」


そう言って、優香が電話口を押さえながら私の方を見た。


「夏美に変わってくれないかって。出れる?」


優香の言葉を最後まで聞く前に、私は無言で思い切り首を横に振った。

優香には迷惑を掛けて申し訳ないけれど、今は絶対に遥と話したくない。

自分の変な意地もあるけれど、遥は丸め込むのが上手いので、言葉巧みにこのまま帰る方向へと話を向けられてしまいそうだからだ。

必死に首を振る私を見て、優香がコクンと頷いた。


「すみません、出たくないそうです。はい、え?いや、あの、お言葉ですけど、せめて一時間くらいは時間貰えます?夏美は私の自宅に連れて行くんで。ええ、はい。じゃあまたその時、ウチの住所教えますんで、じゃ」


優香は若干早口でそう捲し立てると、すぐに通話終了ボタンをタップした。