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電車を降りて、ふと首を傾げる。

場所は優香に任せると言ったけれど、明らかにここは飲屋街じゃなくて住宅街だ。


「……優香?どこに行くつもり?」

「え、コンビニ」

「は……?はぁ!?コンビニ!?なんでコンビニ!?」


驚く私を尻目に、優香が溜息を吐きながら私に携帯を見せて来た。


「ホレ。お宅の旦那。前に夏美に何かあった時の為にって、番号交換させられたんだけど、あ、因みに一応言っとくけど、今日まで一度も掛かって来た事はないから」


なんの事か一瞬分からなくて、ジッと優香の携帯を見つめると、ズラリと『相良さん』の文字が並んでいて。

思わず「えっ!?」と声を漏らすと、優香が苦笑いを零した。


「仕事終わった辺りから、数十分置きに着信が来てる。一応夏美に話聞いてから電話に出ようかなと思ってたんだけど、この着信の量はガチでヤバそうだと思って。このままじゃ捜索願いでも出されそうだから、取り敢えず一回電話に出るよ?」


そう優香が言った側から、マナーモードの携帯がブルブルと震え出した。


「っていうか、これ明らかに私といるって分かってるっぽいよね。夏美GPSか盗聴器でも付けられてるんじゃない?」


優香がうんざりした表情で冗談めかして言った言葉に、遥なら十分あり得る気がして思わず固まると、優香が「え、マジ?」と、顔を引きつらせながら電話に出た。