「ゴメンゴメン、お待たせー」


会社のロビーで背後から肩を叩かれて、慌てて携帯をコートのポケットにしまった。


「なになに、慌てちゃって怪しい〜。夏美から誘ってくるって滅多にないから、私超心配しながら急いで支度したんだよ」


優香がニヤニヤしながらマフラーを首に巻きつつ、両サイドの髪をフワリと後ろに払った。


「超ワクワクしながら、の間違いでしょ」

「やだぁ、そんな事ないよぉ〜。他人の不幸は蜜の味とか言ってないしぃ」


優香が更にニヤニヤしながら、私よりも先に正面玄関から外に出た。


「その喋り方、いつもの口の悪さよりも腹立つからやめて」


苦笑いを零しながら優香の後を急いで追い掛けると、進行方向を指差して私を誘導しつつ、ニヤリと笑った。


「せっかく気遣ってやったのに、面倒くさい女ー」

「……優香って本当口悪いよね。まぁ、さっきよりはマシだけど」

「褒めんなって」

「褒めてない」


二人で軽口を叩き合いながら、駅に到着して改札を抜ける。

優香は言いたい事をズバッと言う質なので、変な気を使わないから一緒にいて楽だ。

特に今は、パーッと騒いで頭を空っぽにしたいと思っているので、こんな時は適度に遊び慣れている優香が最適だ。