急いでメールを開くと……案の定、残業で遅くなる旨の内容が書かれていて。

歩道に思い切り携帯を投げつけたくなった。


───悔しい。

どうしてこうも簡単に、嘘がつけるんだろう。

これは絶対に、冬香さんとの約束の為だ。
物凄く腹が立つのに、どうやって遥が冬香さんと会うのを阻止すればいいのか分からなくて、携帯を握りしめてその場に立ち尽くす。

きっとここで、本当の事を言って引き止めたとしてもはぐらかされて、何もないと言われて終わりだ。

それに今日、行かないでと止めて二人が会わなかったとしても、また後日嘘をつかれて会われる可能性だってある。


どちらにしろ、根本が解決しないと何も解決しないのと同じだ。


……だったら、どうすればいい?


それになにより、二人を会わせたくないのも勿論だけれど、冬香さんはもとより、こうやって平気で嘘をついている遥の事も許せない。

でもだからって、今の私に……何が出来る……?

もう一度携帯をギュッと握り、そのままコートのポケットに押し込んだ。


……これが今の私に出来る、精一杯の反抗だ。


いつもはすぐにメールの返事を送るけれど、今日はこのまま無視してやろうと思った。

冬香さんに会いに行きたければ、勝手に行けばいい。

私は私で、勝手にしてやろう。


そう意気込んで、午後の業務に遅れないよう会社への道程を急いだ。