全て他の思考は掻き消されて行くのに。


遥が、冬香さんに“告白した”のだという事だけが、頭にこびりついて離れない。


逃げるようで嫌だけれど、今は一人になって冷静に考えたい。

そう思った私は、急いで伝票とバッグを持って立ち上がった。


「ご、ごめんなさい。ちょっと、一人になって冷静に考えたいです。今日はこれで……」


頭を下げて急いで立ち去ろうとする私を、冬香さんが呼び止めた。


「あのっ、私、今日……ハルちゃんと会う約束をしています。夏美さんに黙って、もうこそこそするのは嫌だと思ったので、一応伝えておきます」


真っ直ぐに私を見つめて言う彼女の方を、信じられない、という目で見つめ返して、そのまま無視してレジの方へと急いだ。


店の外に出ると、一気に怒りが込み上げて来る。

これは、彼女からの宣戦布告だ。

イライラは募るばかりなのに、どう立ち回ればいいのか分からなくて、更に怒りが増して来る。

申し訳なさそうにしつつも、傲慢な事を言って来る彼女にも、簡単に会う約束をしてしまう遥にも、イライラする。

それに、遥は……どいういつもりで、彼女と会っているの?


分からない事だらけでイライラが増す中、携帯がメールの着信音を告げて来た。

ディスプレイに表示されている名前を見て、ビクリと手が震える。

……遥からだ。