───遥を、

受け入れる覚悟が出来たから、帰って来たって──事……?


何、それ。


なんなの、それ。


私の中をショックが駆け巡る中、同時に怒りもフツフツと湧いてくる。

ダメだ。
彼女に流されちゃダメ。

彼女が遥かに好意を抱いているのは確かかもしれないけれど、でも遥は今、私と結婚しているのだ。

遥の想いに、“嘘”を感じた事はない。

こんな事で、私が怯む必要なんてないんだから。
だから、強気で行かなきゃいけない───、そう思うけれど。


“嘘”を感じた事はなくても、気になる事は……多々、あって。


不安がどんどん私を、暗闇へと引き摺って行く。


「夏美さんには、本当に失礼な事を言っていると重々承知です。でも、私にはハルちゃんしかいないんです。自分でも、どうしてあの時逃げたんだろうって、凄く後悔しています」


そう言って頭を下げる冬香さんを、ただ呆然と見つめ返す。

……この人は、何を言っているんだろう。
勝手過ぎるにも程がある。

遥しかいないって……、そんなの、私だってそうだ。

それに、二人は兄妹なんでしょう……?

そんな事、許されるわけ、ない。

必死に自分の中に正論を並べ立てるも、ドクドクと変な焦りと共に響く心臓の音に、思考を全て掻き消される。