視線を手元のコーヒーに落として、なんて言って話を切り上げようかと考えていると、冬香さんが意を決したように息を吸い込むのが聞こえた。




「私が……留学したのは、ハルちゃんに告白されたからなんです」




────え……?


今……なんて────?



勢いよく顔を上げて、瞬きすら忘れそうになるくらい、目を見開いて彼女を見た。


私の表情を見て、冬香さんが気まずそうに視線を伏せる。




───……頭が、言葉の処理に追いつかない。

誰が、誰に、告白……?

その前に、二人は……兄妹なんだよね?


頭が真っ白になって、冷や水を浴びせられたかのように血の気が引いて行く。


私の顔面蒼白な状態に気付いた冬香さんが、どこか申し訳なさそうな表情をしつつも、それでも辛辣な言葉を投げ掛けて来る。


「……私は、初めて会った時からハルちゃんを、兄妹だと分かっていても異性として見ていました。だけど、いざ振り向いてくれるとなると、許されない事だと分かっているからこそ怖くなって……。だから、遠くに逃げました」


最悪なシナリオとして、同じような事は頭に思い描いてはいたけれど、想像するのと実際に聞かされるのとでは全然違って。

胸が詰まったように息が苦しくなる。

───じゃあ、さっき冬香さんが言った、“返して下さい”って言葉は───……。