「そう、なんですね。じゃあ……やっぱり私が……」
冬香さんがポツリと呟くように言ったかと思うと、突然彼女の目からポタポタと涙が零れ落ちてきた。
一瞬驚きに目を見開いて、彼女を黙ってポカンと見つめてしまったけれど、すぐに慌てて声を掛ける。
「え!?えっ!?あのっ、ど、どうしたんですか!?」
私が声を掛けると同時に、彼女は自分の顔を手で覆って、フルフルと首を横に振りながら俯いてしまった。
え、ど、どうしよう……?
なんで突然泣き出したのか、さっぱり分からない。
話の流れ的に、遥がもう相良財閥に戻らないと分かって泣いているのかと一瞬思ったけれど、彼女の最後のセリフからして、そうは思えない。
きっと闇雲に声を掛けても、煩いだけだ。
……となれば、彼女が落ち着くのを待つしかない。
暫くして、店員さんが冬香さんのコーヒーを持ってきたけれど、雰囲気で察してくれたのか、コーヒーだけ置いてすぐに立ち去ってくれた。
取り敢えずどうしたものかと、途方に暮れながら彼女の方を見ていると、「すみません……」と、何度か彼女が小声で呟きながらハンカチで涙を拭い、そっと顔を上げてゆっくり私の方を見た。
だけどそこには、今まで泣いていたと思えない程、真っ直ぐに私の目を見てくる彼女がいて、一瞬心臓がドキリと跳ねた。