これで、遥が冬香さんと会っているのは間違いないと分かったけれど。

────だけど、じゃあ、なんの為に……?


そんな不安を少しだけ表情に乗せて、冬香さんを見る。

注文を取りに来た店員さんに彼女はコーヒーを頼むと、キャメルのPコートを脱いでバッグの上に畳んで置いた。

ただそれだけなのに彼女の動き一つ一つが凄く上品で、流石相良財閥のご令嬢、なんて思う。

微妙な沈黙の気まずさに耐え兼ねて、自分のコーヒーに視線を落とし、カップの取っ手をそっと握った。


「……あの、」


そう小声で彼女が声を掛けて来た事に、私の手が一瞬ビクッと震えてカチャッとカップが音を立てた。


「ハル……あ、いえ、兄とは、どこで知り合ったのですか?」

「……あ、え、と……」


そんな事聞かれるとは思っていなかったので、思わずパッと頭に答えが浮かばなくて言い淀んでいると、冬香さんが少し焦ったように頭を下げた。


「すみません、いきなり変な事を聞いてしまって。ただ、兄が仕事を辞めて、実家とも縁を切っていた事を帰ってきてから聞かされたので、凄く驚いてしまって」


冬香さんが焦ったように付け足す言葉を聞いて、あ、もしかして。と、もう一つのシナリオが脳裏を過る。