───それは、甘い行為のはずなのに。


一つだけ。


いつも引っ掛かる事が、ある───。



……遥は──私を抱く時、いつも絶対に“避妊”をする。



結婚したばかりの頃は、付き合っている時のクセなのだと思っていた。

だけど、もう結婚して半年が経った今でも、彼は絶対に避妊だけは怠らない。

周りは、二人だけの生活を長く楽しみたいんでしょ、と、惚気だと言うけれど。



………多分、違う。



私の、ただの直感でしかないけれど。
だけどそこに、どんな秘密が隠されているのかと思うと、怖くて聞く事が出来ない自分がいて。

だから今日も、その不安を心に降り積もらせるだけだ。

だって現に今日も、ベッドではない場所だとしても、彼は避妊を……絶対に怠らないから───。






***


さっきから妙に落ち着かなくて、ソワソワと携帯のカバーを開いては閉じて、を何度も繰り返す。

早く来すぎてしまったなぁ、とすっかり冷えてしまったコーヒーを一口含んだ。

昨日、冬香さんとお昼に会う約束をした。
仕事終わりだと、遥にバレる可能性が高いからだ。

冬香さんは大学生のようで、時間の融通はきくという事だったので、合わせてもらう事にした。

遥は私の会社に時々営業で回ってくるので、万が一、という事も考えて、場所は彼女の大学の近くにあるカフェで待ち合わせた。

老舗のカフェなのか、若者よりもどちらかというと年配客が多い気がする。全体的に落ち着いた雰囲気の店だからか、ここだけ時間の流れが遅いようにさえ感じてしまう。

……昨日の彼女の電話での雰囲気からして、私と仲良くなりたいから、とかそういう類での呼び出しではない事だけは確かで。

緊張からか、キリキリと少し胃が痛んだ。