「え、ちょ、遥っ」


遥が無言で脱衣所まで手を引いて行くので、ああ、失敗してしまった、と小さく溜息をつく。



……付き合っている時からそうだったけれど、遥は───嫉妬が半端ない。



最初の頃こそ、重過ぎて苦痛に感じていた自分がいたけれど、そんな彼も含めて全て愛そうと決めた時から、これも愛情表現の一つだと思えるようになった。

今ではこれが遥の“普通”であり、こうでない彼は逆に何かあったんじゃないかと疑ってしまう気がする。

それでも、こうなってしまったら面倒くさい事になるので、出来るだけ普段から気を付けてはいるのだけど、最近はモヤモヤする事が多過ぎて、注意力が散漫になっていた。


「はい、なっちゃんバンザイして」

「……分かった。お風呂入るから、遥は先に食べてて」

「ダメ。俺が洗うから」

「は、はぁ!?遥今上がったばっかりでしょ!?」

「ダメなものはダメ。なっちゃんに他の男の匂いが付いてるとか我慢出来ない」


じゃあ自分はどうなの!?と、思わず反論しそうになったけれど、臆病な私はそのまま言葉を飲み込んだ。

普段の遥は、どちらかというと犬っぽくて主導権を常に私側にしてくれているけれど、こういう時の遥は絶対に自分の意思を曲げる事はない。