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チラリと時計を見ては、小さな溜息が漏れる。

……まだ、午後の十時前だ。

いつもだったらこんなに気にならないのに、どうしてなのか今日は気になって仕方ない。

変にソワソワして、さっきから何度もポトフを温めては火を止めて、を繰り返してしまう。


───昼間に優香が言っていた事は、事実で。


遥は、私以外の女性には驚く程素っ気ない。
勿論愛想はいいけれど、仕事以外で自分から話しかける事はないし、来るもの拒まずだったと聞いた割には、私が遥と知り合ってからは女性の誘いを受けているところなんて、一度も見た事がない。


きっと……いつの間にかその遥の態度が私の中で当たり前になっていて、だから昨日の妹さんへの態度に、強いショックを受けた自分がいたんだ。

……でも何故か、妹さんだと聞かされた今も尚、変なモヤモヤは私の心に巣食ったままで。

だから余計に、早く遥に会って安心したいと思ってしまう。


今日何度目か分からないポトフの鍋に火を点ける為に椅子から立ち上がると、ガチャリと鍵の開く音が聞こえてくる。

あ、遥だ……!

いつも残業で遅くなる時はリビングでそのまま待っているけれど、今日は思わず嬉しくて玄関へと小走りで向かった。