「昨日、戻ったばかりだよ」


そう言って遥に嬉しそうに笑いかける彼女は、自分に似ていると思ったけれど、……気のせいかもしれない。

私よりも、彼女の方がはるかに……可愛い。


「……そっか。一度家には戻ったのか?」

「うん。二人とも相変わらずだった。……ハルちゃん、結婚したんだね」


そう言って、彼女は私をチラリと見た。
目が合って、一瞬ドキリとする。

あっ……、ここは挨拶すべきところ、だよね?

私が慌てて挨拶しようとすると、彼女は柔らかく微笑んでペコリと頭を下げて来た。


「初めまして。私、ハルちゃんの妹の冬香です」


あ……、なんだ、妹さんだったのか。

妙にホッとしつつ、私も挨拶を返した。


「あ、こちらこそ、ご挨拶遅くなってしまいすみません! 私、夏美っていいます!」


慌てて挨拶を返す私を見て、遥がふわりと笑った。



………遥は、実家と縁を切っている。

だから、結婚すると決まった時も……結婚式の時でさえも、彼の親戚どころか、兄妹、両親にすら会った事がない。

結婚式の時は、彼の上司が代表で親代わりをしてくれていたくらいだ。

……そこまで徹底して、実家と関わらないようにするその理由を聞いた時、彼は酷く苦しそうに言葉を漏らした。



――――『人間でいたかったから』――――、と。