目が合った途端遥が、ん?と小首を傾げてふわりと微笑む。

すると近くの女子高生が小さく叫び、キャアキャアと騒ぐ声が聞こえて来た。


……遥はモテる。それも半端なく。


そんな彼を独占出来る事に、少しの優越を感じるも……病的なまでの彼の過剰なスキンシップを思い出して、やっぱり外では許しちゃダメだと思い直し、私は遥に向かって緩く首を横に振った。





***


夕方、遥から遅くなる旨のメールが来た。

今は十二月なので、仕事も忙しい時期に差し掛かる。
自分から外でベタベタするのは禁止と言っておきながら、一緒に帰れないのはなんだか少し寂しく感じて、自分の身勝手さに苦笑いが溢れた。

だけど、この忙しい時期に。

私が入院して眠り続けていた二日の間、遥は仕事を休んで家に帰りもせず、ずっと付き添ってくれていたらしく。

それに加えて私が目を覚ましてからも、連日早くに仕事を切り上げて病院に来てくれていたし、退院の日はお昼から会社に行ったとはいえ、自分の案件ではない仕事に時間を割かれていたのだ。

いくら仕事が出来る遥とはいえ、きっと仕事が溜まっているはず。


……そう考えると遥の異常なまでのスキンシップも、しばらくは黙って受け止めていてあげるべきだったのかな、なんて今更ながら思ってしまう。


取り敢えず、彼が帰って来てホッと寛げる空間を提供できるよう努めよう、と私は家路を歩く歩調を速めた。