───あれから。
私の許しが出たのをいい事に、家に帰ってから遥に速攻で押し倒されたのは言うまでもなく。
次の日、私はかなりの疲労でベッドから見事に起き上がる事が出来なくて、限度ってものがあるでしょ!と、遥に激怒したのが丁度今から二日前の朝。
退院したのが金曜だったので、丁度土日でゆっくりしてから出社しようと思っていたのに……いまだに身体の怠さが抜けない。
小さく息を吐いてダイニングテーブルの席に腰掛け、朝食に用意されているサンドイッチの隣にあるコーヒーに手を伸ばす。
……と、目の前でニコニコ微笑みながら、同じようにコーヒーのマグカップに口を付けようとする遥と目が合った。
「なっちゃんおはよう」
「……おはよう」
ニコニコと機嫌の良い遥に、いまだに身体の怠さを引きずる私は少しイラッとして不機嫌に返事をする。
この体調で、今日から仕事復帰しなくちゃいけないのかと思うと、つい溜息が零れた。
あからさまに不機嫌な私を、それでも遥はニコニコしながら飽きる事なくジッと見つめてくる。
「……何?」
「んー?」
「いや、ジッと見てるから。私の顔に、何か付いてる?」
「ううん、付いてないよ。ただ、可愛いなぁと思って」
遥が嬉しそうにふわりと笑って言った。
なんの恥ずかしげもなくさらりと言ってのける遥に、私の方が恥ずかしさで思わず叫びたくなる。
───遥と向き合ったあの日から、元々甘々だった彼が、更に輪を掛けて甘々になっている気がするのは私の勘違いでは……ない、はず。
だけどだからこそ、そんな彼には一言言っておかなきゃいけない事がある。