駅の柱を背もたれに立つ遥を、道行く女性達がみんなチラチラと見て行く。

だから遥と待ち合わせをすると、彼がどこで待っているのかがすぐに分かるのだ。それぐらい、彼は容姿端麗だ。


「なっちゃんお帰り!お疲れ様っ」

「うん。遥もお疲れ様」


私に気付いた遥が、パッと表情を輝かせて満面の笑みで近付き私に声を掛ける。

そうすると途端に、周りの女性達が値踏みをするかのように私を見るのだ。

もういいけどね、慣れたから。
自分が遥かにつり合っていないなんて、前から分かっている。

私なんて、どこにでも居そうな普通の容姿なのだ。

だから実はいまだに、遥は何が気に入って私なんかのストーカーをしていたのか分からなかったりする。

遥に聞いても、『理由なんてない。一目惚れだから』としか言わないので、あまりしつこく聞いた事はなくて。

それでも、遥は全心全力で私を好きだと告げて来るので、今まで不安に思った事はない。


それも、遥の配慮なんじゃないのかな、なんて少しだけ思ったりもする。


だって遥は、いつも濁して昔の事をあまり話してはくれないけれど、相当な数の女性と遊んでいたと思われるからだ。

前にお互いお酒に酔った時、私がしつこく絡んで聞いた事があった。その時ポツリと言った言葉が、『来るもの拒まず去る者追わずだったから』と、かなり問題発言をされてケンカになった事がある。

まぁ、ケンカと言っても、私が一方的に怒っていただけだったけれど。