「え、じゃあもしかして、実家で遥が口数少なかったのも……」


私の言葉に遥は少し渋い顔をすると、「だってあれは、」と口先を少し尖らせた。



「なっちゃんと二週間以上も離れていたから、なっちゃんの持ち物に俺の知らない物が増えてて、ショックで……!」

「え、何それ、どういう……」

「俺、なっちゃんの物は全部記憶してるの。あぶらとり紙一つだって全部写真に撮ってるし。だから知らない物が増えてる事にショックで、」

「や、やだやだやだ!!!!ちょっと何それ!?」



眉を顰めて叫ぶ私を、遥はキョトンと見ていて。

そうだった……!と、遥の気質を思い出して、ハッとする。



「ま、待って……!もしかして、退院後すぐに実家に向かったのって、私が実家で寝泊まりしてるのお母さんに聞いてたからじゃなくて……」

「え、うん?なっちゃんが家を出てから、俺毎日なっちゃんの帰る姿を見守ってたから」

「は、はあぁぁぁぁ!?!?ちょっと、穏やかにストーキング宣言するのやめてよ!」

「ええぇ!?なんで!?だって俺、なっちゃんの事だったらなんでも知りたいし忘れたくないもん!」

「限度ってものがあるでしょうーー!!」



グググッとくっ付いていた遥を押し退けようと腕を突っ張ると、遥がションボリした表情になる。


……ああ、もう。
この表情をされてしまうと、突き放せなくなる。


だけど私も大概、遥に毒されているなぁと思う。


───だって。


そんな遥の行為を、嬉しいと、愛しいと思ってしまう私がいるのだから。



取り敢えず───、元ストーカーの夫は、




「……ねぇ、なんでエレベーター動いてないの?」

「え?だって、家に帰っても押し倒せないなら、今だけでも長くなっちゃんとくっ付いておきたいなって」

「………押し倒さないの?」

「……!押し倒していいの!?」





────……今でも妻の、ストーカーです。










〜fin〜