「……お前、目がマジなんだよ。こえーな。本当、厄介な男に好かれたよね夏美ちゃん。ま、今日は助かったよ。お疲れさん」


神崎社長の言葉と同時にエレベーターが到着したので、遥に背中を押されて乗り込みながら神崎社長へと頭を下げた。

するとエレベーターが閉まっていくのを見ながら、神崎社長がニッコリ笑って手を振ってくれたので私も微笑み返すと、すかさず遥かに手で目を塞がれた。


「ちょ、遥……!」

「神崎はイイ男だから、あんまり見ちゃダメ」


遥の手を退けながら彼を見上げると、少しだけ口先を尖らせてムスッとした表情の遥が見えて、つい笑ってしまった。

だけど少し疲れの色も見える彼を労いたくて、遥の手を両手でキュッと握って少し顔を俯ける。



「わ、……私にとっては、遥が……一番だから。今日とかも、本当に遥って凄いんだなぁって惚れ直した、ところ……」

「………」



恥ずかしさに顔が赤くなるのを止められなくて、顔がどんどん俯いて行く。

ジッと遥に見られているような視線を感じて、居たたまれなくなって手を離そうとすると、そのまま抱き寄せられてぎゅうぅぅっと強く抱きしめられた。



「……反則。なっちゃんそれ反則。せっかく必死に我慢してたのに、やっぱもう無理」



「我慢……?」と、抱きしめられている腕の中で聞き返すと、遥が抱きしめる腕を緩めて、私の顔を覗き込みながら呻いた。


「なっちゃんの側に長くいたり、触れてると、すぐに押し倒したくなるから。なっちゃん病み上がりだし、疲れさせたくないと思って」


遥が真面目な顔で言うものだから、一瞬ポカンとした後、一気に首まで赤く染まってしまった。


「なっ……!じゃ、じゃあ、家に帰ってから遥が変だったのって……」

「だって、なっちゃんの側に三分もいたら押し倒したくて堪らなくなるから」


さ、三分って……!!