それにここまで滅茶苦茶な事をした彼なのに、何故か私を抱く時必ず避妊だけはしていて。

そこにまだ彼が正常な判断を下せているのだと見られると同時に、どこかでもう、私が離れて行く事を覚悟しているような、そんな彼の感情を感じ取ってしまい、泣きながら私に抱き付いて眠る彼に、胸が苦しくなった。



───彼の狂気染みた感情は、理解は出来ない。



でも、現に今の状況は別として、私は彼に何か危害を加えられたわけじゃない。

確かに彼の愛情は、重過ぎるところがあるけれど、それでも私は一緒にいて幸せだと感じていたのだ。


それに、この先もう、私をここまで愛してくれる人はいないかもしれない。


そう思うと途端に、私の胸で泣きながら眠る彼が、情けないけれど愛しいと思ってしまった。








「ねーねーなっちゃん!今日は何時頃帰れそう?」

「んー、多分今日は定時で上がれると思うんだけど。なん……」

「やったー!!俺も今日早く帰れるんだ!駅で待ってるね!一緒に帰ろうねっ」

「ちょっ、もう!分かったから離れて!お茶碗が洗えない!」


ご飯は遥が作ってくれるので、洗うのは私の役目だ。
お茶碗を洗う私の背後で、遥がベッタリ私に抱きつきながらスリスリと首に頬擦りをしてくる。


───そう。

私は、ストーカーだった彼を、愛しいと思った時にまた……受け入れる覚悟を決めたのだ。

勿論、興信所と縁を切るのを条件に、だけれど。