黙り込んでしまった私をしばらく遥が観察しているような視線を感じて、更にジワリと耳が熱くなる。

だけど私を包むように抱きしめている遥の腕が震えているような気がして、驚いてつい振り返ってしまった。


「……!」

「ふっ、ご、ごめっ……!だって、なっちゃん耳まで真っ赤だし、あまりにも可愛すぎて……!!」


そう必死に弁解しながら、遥が肩をプルプル震わせつつお腹を抱えるようにして私から少しだけ離れる。

その様子に一瞬ポカンとしてしまったけれど、ようやく遥が笑いを堪えるために震えていたのだと気付いて、更にブワリと一気に身体中の熱が上がった気がした。


「……ひ、ひっど……!人が決死の覚悟で言った言葉でからかうなんて……!!」


恥ずかしさと怒りで、涙目になりながら遥の胸をグッと後ろへと押す。

もう二度と言ってやるもんか!と、息巻いてグイグイ遠ざけるように押していると、ようやく笑いの治った遥が私の両方の手首をグッと握って、左手の薬指の辺りにチュッとキスを落とした。



「ゴメン、からかったわけじゃないよ?なっちゃんがあまりにも可愛くて可愛くて。あーもう、本当可愛い。どうしよう、なんでそんなに可愛いの。可愛すぎて困る」



甘くとろけるような笑みを向けられて、ドキリと胸が高鳴る。

でもあまりにも可愛いを連呼されて、恥ずかしさにからかいの延長だと思ってしまいそうだけれど、遥ってこういう人だったといつもの彼を思い出して、怒りが萎えいでそっぽを向いた。


すると、遥が私の頬に優しくキスを落として来たので遥の方へと顔を向けると、更に鼻、反対側の頬、おでこ、と順番にキスを降らせてくる。

ドキドキしながら彼を見上げると、また、遥が甘く微笑んだ。




「ベッタベタに甘やかしてあげる」




その瞬間の彼の妖美な笑みに、一瞬腰が砕けそうになったなんて───、絶対教えてあげないけれど。