……本当、遥はズルいと思う。

私がその表情に弱い事を知っていて、彼はそうしてくるのだ。

そんな表情をされた上に、しかも撮っていいと言ってしまっていた手前、これ以上ダメだとも言えないし。

少しだけ唇を尖らせて「怒ってない」と言うと、遥が「ふはっ」と噴き出した。


「あーもう、なっちゃんバレバレ過ぎて、本当可愛い。ゴメンね、俺、なっちゃんと一緒に帰れるんだと思ったら嬉しくて、ちょっと浮かれ過ぎた」


遥が私の頭をふわりと撫でて、嬉しそうに破顔した。


その顔に、思わずドキリとする。


ジワリと頬が赤くなるのが分かって、恥ずかしさに急いで視線を手元のバッグへと戻すと、近くのテーブルにコトリ、とカメラを置く音がした。


───と、思ったら、次いで遥が私を後ろからふわりと抱きしめて、前を向く私の顔を覗くように右肩に顎を乗せて来た。


「……え、あ、の……遥?」


ドクドク───、と早鐘のように鳴る心臓の音が遥に伝わってしまっていると思うと恥ずかしくて、平静を装ったフリをして言葉を紡ぐ。

すると遥が「あれ?」と、私の右肩で小首を傾げてクスリと笑った。




「──夏美は俺と、イチャイチャしたいんだよね?」




───ドックン、と大きく心臓が跳ねる。


遥の言葉に思い切り固まってしまい、思わず手元を見つめたまま目を見開いた。


い、今!?

え、なんで、今!?

っていうか、何これ死にそう……!恥ずかし過ぎて死にそう!!!

過去の自分抹消したい……!今すぐ抹消したい……!

死ぬ程恥ずかしくて、顔から火が出そうで。
とてもじゃないけど、後ろなんて振り向く余裕はない。