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あれから私は二日後に無事退院の日を迎えて、朝から遥が仕事を休んで迎えに来てくれた。

────の、だけれど。

……相変わらず、遥は遥なんだなぁとつい苦笑いが溢れる。


「………遥、いい加減、撮りすぎ」


カシャッカシャッ、と連続して一眼レフのシャッター音がすぐ側で聞こえて来て、小さく溜息が漏れた。


「え、だってなっちゃんが退院出来るんだよ!?こんな目出度い日に撮らずしていつ撮るの!?」

「……あのさ、記念に一枚ってので良くない?」


迎えに来てくれたと喜んだのも束の間、すぐさま遥は私をあらゆる角度からカメラで撮り始めたのだ。

最初は私も笑顔で対応していたものの、あまりにも何枚も撮るので途中から呆れて荷物をバッグに詰め始めた。

それでも写真を撮るのをやめない遥に、今、初めて撮り過ぎだと文句を言ったところだ。


「もちろんとっておきの一枚は、なっちゃんに言われた通り心の中に残しているけど、それとこれとは別。なっちゃんを写真に撮るのは俺の趣味だから。それになっちゃん俺に、いくらでも好きなだけ撮っていいって言ったよね?」


そう言って、遥がカメラから少し顔をずらして私を見てにっこり微笑む。


……いや、うん、言った。確かに私、言ったけどさ!?
しかも、あの日の事思い出すと翌日の事も連動して何故か思い出すから、なんだか今死にそうに恥ずかしくなるけどさ!?

だけど、これじゃまるで教科書の端とかにある、パラパラ漫画かってくらいの勢いで写真を撮られている気がするんだけど……!

もういっその事、動画で良くない?って以前遥に言った事があるけれど、遥曰く、ベストな角度で撮れたシーンを止めた状態でずっと眺めていたいんだとか。

溜息を吐きつつも、もう好きにさせよう、と歯ブラシやコップをバッグに詰めていると、遥が私の真横からひょこっと顔を覗き込んで来た。


「……なっちゃん、怒った?」


小首を傾げながら、遥が少しシュンと落ち込んだ表情で見て来る。