途端に全身がぶわりと熱くなって、バッと顔を遥の方へと向ける。

すると私が振り向いた事で唇を耳から離した遥が、至近距離で私の顔を覗き込みながらクスリと笑った。


「だから、今……理性を飛ばさないように必死」


そう言って、遥が自分の唇の端をペロリと舐めた仕草があまりにも艶っぽ過ぎて、心臓がバクバクと今にも飛び出しそうだ。


……これは、中々にハードルが高そうで参ってしまう。


そう、思わず項垂れたくなった。

遥の想いを聞いてから、私は自分の態度を改めなきゃいけないと考えた結果、出来るだけ自分の気持ちを言葉にして遥に告げようと決めたのだけれど……全然ダメだ。

なんだかんだでやっぱりこういう時の主導権を握っているのは遥なので、完全に遥に空気を持って行かれると、付いて行くのと自分が反応を示すので精一杯で。

……完全に、手のひらで転がされている状態になる。

そんな中で自分の気持ちを口にするなんて恥ずかし過ぎて、私にはまだまだハードルが高過ぎると思ってしまうのだ。



だけど少しだけそれが……悔しいな、とも思う。


遥が私の腕を自分の首から名残惜しそうに外しながら、両方の手の甲にチュッと口付ける。

もう離れなきゃいけないのか、と思うとなんだか寂しくて、遥ともっとくっ付いていたくて、私の手をそっと離そうとした彼の右手をぎゅっと掴んだ。

私の唐突な行動に驚いたのか、遥がキョトンとした顔で見てくる。


……あ、ヤバイ。想像以上に恥ずかしい。


まだ離れたくなくて思わず彼の手を掴んだけれど、こういう時、なんて言葉にして伝えたらいいんだろう……?