遥の狂気染みた表情に身動きすら取れなくて、膝がガクガクと震え出す。




───私は、とんでもなくヤバイ男に捕まってしまったのだ。




それから、有無を言わさずタクシーに乗せられ、遥の家まで連れ込まれた。

逃げようと思えば、叫んで助けを求めて逃げられたはずだ。
それでも私は……それが出来ずに、遥の家まで“自分の意思で”ついて来た。


だって、私の腕を掴む遥の手が……震えていたから。


静かに怒りを前面に押し出したような表情の彼だったけれど、私の腕を掴む手は正直で。


そんな彼に気付いた時、まだまともに話せる余地はありそうだと思ってしまったのだ。

それに、今まで私を全力で愛してくれていた彼に、申し訳なさと同情の感情も湧いてしまい、どうしてもきちんと話をしたいと思ってしまった。



でも、そう思ってしまったのが運の尽きで。



それから私は約一週間程、遥の家に軟禁されてしまった。

仕事先には勝手に連絡をされ、遥も同じように一週間休みを取って四六時中私を抱き続けた。

正直最初は逃げ出したら殺されそうで、『この人は狂っている』と、怖くてたまらなかった。

だけど彼は、毎度毎度私を抱いた後に泣いて縋ってきた。




「離れて行かないで」────と。