────あれから。

巡回に来た看護師さんに、何故か遥がめちゃくちゃ怒られて、彼は病室からつまみ出されてしまった。

何度も泊まりたいと駄々をこねた遥だったけれど、結局は私も目が覚めて容態も安定していた為、面会時間にまた来るようにとピシャリと跳ね除けられて、遥は涙目になりながら帰って行った。



翌日、朝から仕事を休んで来た遥をなんとか説得して会社へと向かわせると、入れ替わりで母が来た。

母には私からは何も話していなかったけれど、遥からは聞いているんだろうなぁと色々聞かれる事を想定して構えていたけれど、「仲直りは出来たの?」とだけ聞かれ、頷く私を見て母はそれ以上は何も聞かなかった。

ただ、


「夏美もだけど、遥君にちゃんとしたご飯食べさせなさいよ〜?げっそり痩せちゃって可哀想に」


と、どんな時でも遥贔屓の母に、何故だかホッとして思わず笑みが漏れた。

母なりに、私に気を遣って言ってくれているのが分かる。
だって口ではそんな事を言いながらも、母の持って来てくれたお見舞いの食べ物は全部私の好物だからだ。



───……温かいなぁ、って思う。



私は自分の家族が大好きで。

そんな私を知っているからか、遥も私の両親をとても慕ってくれていて、下手したら私よりも遥は両親を大切にしてくれていると思う。


そんな遥だから、今回母に連絡を取る事はとても苦痛を伴ったに違いない。

それでもきちんと連絡を取って、遥が誠心誠意両親に尽くしてくれているという事が、母の態度からも分かって。


だから母もきっと、いつも通りの母なのだろう。






***


午後から母が帰ってしまい、遥のたっての希望で個室というのもあって、静かだなぁと窓の外をぼんやり眺める。

外の風は冷たいとしても、ポカポカと暖かそうな日差しに目を細めつつ、少し歩こうかな、なんて思っていると、後方から控えめなノック音が数回聞こえて振り返った。