「………愛していないわけ、ないでしょ」




ぼたぼた零れ落ちる自分の涙はそのままに、遥の頬へと手を伸ばして彼の涙を指で拭う。



「遥が好き過ぎて……私の方こそ、遥がいなくちゃ生きていけないよ」



私の言葉に、遥は目を見開いたまましばらく固まっていたけれど、彼の頬に触れていた私の手をぎゅっと握りしめ顔をグシャリと歪めたかと思うと、彼はそのままボロボロと大粒の涙を零し始めた。



「………それは、本当……?」

「うん、本当」

「……今、写真、撮ってもいい……?」



この場にそぐわない彼のセリフに、思わず笑ってしまった。

だけどそれだけ、彼が今のこの瞬間を忘れたくないのだと思っている想いが伝わってきて、私は笑いながらも彼をギュッと抱きしめた。



「写真は、これからも遥が好きなだけ撮っていいよ。でもね、私、思うんだ。写真に撮って得る安心感よりも、忘れたらいけないって緊張感を持ってそれを心のアルバムに刻む方が、人って忘れない生き物なんじゃないかなぁって。だってほら、写真は見返して初めて思い出したりするけれど、心のアルバムに刻んだ思い出は、いつでもすぐに思い出せるでしょ?」



そう告げて、彼の表情を見ようと身体をほんの少し離すと、遥が更に私をギュッとキツく抱きしめて首筋に顔を埋めて来た。


「……やっぱ俺、なっちゃんが好きだ。………そういう風に、物事が考えられるなっちゃんが、本当に、本当に好きだ」


涙声で告げる遥に私もより一層愛しさが増して、抱きしめ返しながら優しく彼の背中を撫でた。