「私が……遥から、逃げる……?なんで……?」



───“やっぱり”───。



そう思う自分の心に確証を得ようと、遥をジッと見つめる。

すると、途端に遥が戸惑うように視線を泳がせ始めた。


その彼の態度で、やっぱりそうなのだと確信する。



─────どうして、そんな勘違いに至ってしまったのかは分からないけれど。



遥は、大きな、────大きな、勘違いをしている。




「……遥は、どうして私が遥の側にいると思ってる、の?」



私の問いに、遥が大きく目を見開く。
次いで、彼の瞳は私を見ているはずなのに、どこか遠くを見ているかのように翳りが見えた気がして。



「───……同、情……?」



こちらを窺うようなその遥の声と態度に、強い憤りを覚えて彼の手首をグッと握り込んだ。


「違うっ……!違うっ、違う、何それっ、遥、私をバカにしてるの……!?」


私の怒りに驚いたのか、遥が焦りながら私を宥めるように私の手を外そうと触れて来る。


「ゴメン、そんなつもりは、」

「バカにしないで!私が同情だけで、好きでもない人と結婚するとでも思ってるの!?」

「だって、俺はなっちゃんを無理矢理閉じ込めたし、」

「何それ!じゃあ、この半年間、私はずっと遥と同情だけで結婚して一緒にいたとでも言うの!?」


私の言葉に、遥が息を飲むのが分かって。




「……違う、の?」




遥が本気でそう思って言っているのが、声色から伝わってくる。

途端に、そんな風に遥に思わせてしまっていた自分が情けなく感じて、涙がぼたぼたと溢れてきた。