「俺が告白した翌日から……冬香は病院に来なくなった。だけどそうなった事で、どこかホッとしている自分もいて。そんな時、タイミングよく俺の秘書が“ある書類”を持って病院に来たんだ。それは……事故に遭う前に俺が依頼していた興信所からだった」



遥がまた、視線を俯ける。



一度は、別れる原因にまでなった興信所。



私が酷く嫌がって以来、遥は興信所という単語さえ口にしなくなっていて。

だからなのか、視線を伏せた遥が一点をジッと見つめたまま眉尻を少し下げた。



「……今更だけど、本当に、ゴメン。………そこには、沢山のなっちゃんの情報が記されていて。それらを見た瞬間、自分でも不思議なくらい一気に記憶が戻って来た」



もう一度、「ゴメン」と小さく告げる遥に、なんて言葉を掛ければいいのか分からなくて、私は彼の頭へとそっと手を伸ばした。


───……不思議と、初めて興信所の事を聞かされた時のような怒りは湧いてこなくて。

それどころか、思い出してくれた事に喜びさえ感じている自分がいる。


この、今の私の気持ちをどう言葉にすれば伝わるのか分からなくて、私はふわりと彼の頭を撫でた。

すると、遥が驚いたのか目を瞠って私を見て来る。

だけどすぐに彼は顔をクシャリと歪めて、ポトリ、と涙を零した。