「……だけど、なっちゃんを初めて見た日から四ヶ月くらい経った頃、パッタリとなっちゃんを見掛けなくなった」


あ、と思い遥を見る。
丁度その頃、私は一人暮らしを始めたのだ。


「凄く……凄く、後悔した。なんで声を掛けていなかったんだろうって。だけど正直、あの頃の俺は女の子へアプローチなんてした事なくて、どうすればいいのか全くわからなかった」


……遥のこの容姿からすれば、女の子なんてわざわざ口説かなくても、勝手に寄って来てくれていたに違いない。

なんだか昔の事とはいえ、モヤモヤしてしまいそっと遥から視線を逸らした。


「それから、必死になってなっちゃんを捜した。自分でも笑えてしまう程、なっちゃんに会いたくて……一目だけでも姿が見たくて。でも……何も分からなかった」


遥がどれだけ落胆していたのか声のトーンでなんとなく分かって、あの時私が何か出来たわけでもないのに、妙に申し訳なく感じてしまった。


「だけどそれから丁度三ヶ月くらい経った頃、なっちゃんが以前助けていたおばあさんが、あまりにも必死に捜す俺を見兼ねたのか、『あの子は夏美ちゃんって言うのよ』って、やっと下の名前だけ教えてくれたんだ」


また、あ、と思って遥を見た。
……やっぱり、花田さんの言っていた男の人って、遥だったのだ。

遥の方を見た私を見て、彼は少し焦ったように「でも、ちゃんと俺の身分証明した上でだから」と、言葉を付け足した。

遥が花田さんを脅したりしていないのは、あの日の花田さんの口振りで分かっている。あの花田さんが教えたくなる程って、どれだけ遥は必死に私を捜してくれていたのだろうと思うと、なんだかじんわりと胸が温かくなった。