───……冬香さんが、私の代わり……?


どういう事なのか意味が分からなくて、黙り込んだ。
そんな私の様子を気にしてか、遥は身体を少し離して私を見ると、腕に伝う出血に気付き慌てて自分のハンカチで押さえて来た。


「ゴメン、なっちゃん……!今、看護師さんを呼ぶから取り敢えずベッドに横に……」


そう言って遥は素早く私を抱きかかえ、ベッドの上へとそっと下ろすと、すぐに私から離れようとしたので必死に遥の腕を掴んだ。


「お願いっ、行かないで!ちゃんと後からナースコール押すから、……だから、どういう事なのかちゃんと説明して……?」


私の言葉に、「でも、」と引こうとしなかった遥だったけれど、ジッと見つめる私の視線に耐え兼ねたのか、視線を逸らし俯けた。


「……分かった。じゃあ、せめて横になって。なっちゃんが聞いてて、……気分の良い話ではないから」


遥が私の背に手を添えながら、ゆっくりとベッドへと身体を横たえさせる。

遥の言葉を聞いても、彼がどこかに行ってしまいそうで、私は遥のスーツの袖をギュッと握り離せずにいた。

私が掴んでいる袖を見ながら、遥は物憂げな眼差しで私を見る。

だけど遂に観念したのか、遥が私のベッドの横の椅子へとゆっくり腰掛けた。


「……どこから、話せばいいのか……」


そう言って遥は暫く視線を彷徨わせていたけれど、覚悟を決めたのか私を真っ直ぐ見つめて来た。