私が彼を避け続けて一ヶ月が経ち、そろそろ誤魔化しも限界かもしれないと思い、彼を会社近くのファミレスに呼び出した。

勿論この時は、別れ話、というよりは、しばらく距離を置きたいと告げようと思っていた。

正直、普段の彼の愛情の重たさと、彼の理解出来ない部分に恐怖を感じている事もあって、早々に別れを切り出すのは危険かもしれないと思ったのだ。

それに、ファミレスならば人目もある。
下手に変な事は出来ないだろう、なんて、そこまで警戒している自分に少しだけ罪悪感が湧く。───でも。


……もしも彼が、元から私のストーカーだったのだとしたら。


痴情のもつれで殺害……なんて、今の世の中あり得ない事じゃない。

それに、遥の事がまだ完璧に嫌だとは思えないからこその決断でもあった。




「遅くなってゴメン!なんだかこうして会うのは久しぶりだね、なっちゃん」


彼が優しげに目を細めて、嬉しそうな顔で私の向かい側に座る。

その事に罪悪感で押しつぶされそうになりながらも、彼をいまだに気味が悪いと感じてしまう自分がいるのだからしょうがない。


「……今日は、話があって呼んだの」

「うん、なーに?」


嬉しそうな顔をそのままに、彼は可愛らしく小首を傾げて私を見つめる。