結婚式の夢を見た後に……この現実はキツ過ぎる。


───やっぱり遥は、冬香さんの元へ戻るつもりなんだ。


いや、戻るつもりも何も、最初から遥は私なんて見ていない。
私に、冬香さんを重ねて見ていただけだ。


悔しくて、苦しくて、遥に握られている手を引き抜こうとグッと引っ張った。

すると、その振動で目が覚めたのか遥がゆっくり目を開いて、次第に目を大きく見開き、──ガタンッと椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がると、私をベッドの上から覆うように勢いよくギュッと抱きしめた。



「夏美っ……!」



その、彼の私を呼ぶ声が、夢の中で呼ばれた声と重なる。


酷い人だと───。

───悔しくて罵りたいのに。


彼を憎み切る事が……出来ない自分がいる。


「良かった…っ…良かった……!」と、涙声で私の耳元で何度も呟いていた遥は、また勢いよく身体を離すと、先生を呼んでくるから、と慌てて病室を出て行った。





***

……どうやら私は、会社で倒れて救急車で運ばれ、そのまま二日も眠り続けていたらしい。

多分、最近食事も睡眠もろくに取っていなかった所為で、体力が落ちまくっていたからだろう。

少し風邪を拗らせていた状態だったので、このまま安静にして、二日程入院すれば退院出来るとの事だった。


先生や看護師さんが出て行ってしまった個室の部屋で、遥と二人きり。

寝ていて上から見下ろされる状況が気まず過ぎて、身体をなんとか起こした状態でいた私は、遥の方を見る事が出来なくて、点滴が落ちて行くのをただひたすらジッと見ていた。