……今、何時で、ここはどこの病院なんだろう。

そんな事を冷静に思いながら、花田さんと別れてからの行動を思い出す。


会社には……確か、辿り着いたはず。
それでも、段々と頭痛が酷くなっていって……。
そこから先は、思い出せない。

帰らなきゃ、そう思って身体を起こそうとした時、誰かに手を握られている事に気付いた。

顔を少しだけ動かして下の方へと視線を向けると───。



私の手を両手で握り、ベッドにうつ伏せるように眠る遥が見えた。


───ドクリ、と大きく心臓が跳ねる。


彼は、いつからここにいたのだろう……?
スーツ姿のままだから、仕事を終えてここに来てくれたのか、なんだか酷く髪も乱れている気がする。


気まずさはあるけれど状況を確認しなければいけないし、と遥を起こそうと声を掛けようとした時、ピクリと彼の指が動いた。

このまま起きるかな、と彼の手元を再度見つめ──。



ドクン、と一際大きく鼓動が跳ねた。



全身の血の気が一気に引いて行く。

とてもじゃないけど声なんて発せられなくて、彼の手を、間違いじゃないかと必死に見つめた。

酷いショックに、夢の続きを見ているのだと思いたかったけれど、目の淵から溢れる涙は温かくて。


………これは現実なのだと私に突き付ける。



───……遥が、……指輪を外している。