───夢を見た。


とても、とても幸せな夢────。


それが夢だと気付いたのは、既に過ぎ去りし過去の出来事だったから。



私が純白のドレスに身を包み、


『───夏美』


──そう、名前を呼ばれて振り返ると。


凄く、凄く嬉しそうに目を細めて、微笑む遥がいた。

だけど、このあとすぐに私を抱きしめた遥は、ポロポロと涙を零したんだっけ。

私がポンポンと彼の背中を撫でてあげると、彼はずっと『ありがとう、ありがとう』と、うわ言のように呟いていて。

普通は立場が逆じゃない?と、私が笑うと、彼は私の顔中にキスの雨を降らせてまたぎゅっと抱きしめた。


『なっちゃんのお陰で今、やっと人間に戻れた気がする』


と、小さく掠れた声で囁くと、ポロポロ零す涙で私の肩を濡らしながら、彼は幸せを噛み締めるかのように抱きしめる腕の力を強めた。


大げさだなぁ、と笑いながらも嬉しくて、こんなに私を想ってくれる人の元に嫁げるなんて、私は世界一幸せなんじゃないかと本気で思った。




幸せな、幸せな………夢。



そう、ハッキリと夢だと自覚したのは、目を開けて真っ白な天井が目に入り、次いでゆっくり動かした視界の端に病院の点滴が見えたから。

自分は今、どうして病院にいるんだろうとぼんやりと記憶を巡らしながら、目の淵に溜まった涙がツゥーッと顔の横へと流れて行く。



───ずっとあのまま、幸せな夢を見ていたかった。