「なっちゃーーーーんっ!!朝だよ!起きてっ」
朝から鬱陶しいくらい大きな声で寝室のドアを開ける彼は、相良遥(サガラハルカ)───私の夫だ。
「なっちゃんなっちゃん!なーつーみーちゃんっ!」
……朝から、本っ当鬱陶しい。
せめて普通のテンションで起こしてくれたなら、まだ気持ち良く起きれるのになぁ、なんて思いつつ目をつぶったまま寝返りを打つと、
───カシャッ
カシャカシャカシャッ!!
連写されるカメラのシャッター音が聞こえて、またか、とつい眉を顰める。
いい加減やめさせなければ、と、瞼を開こうとしたタイミングで、今度は唇を柔らかく温かなモノで塞がれた。
「……っ!!んー!!んーっ!!!」
両目をバッと開いて、私の上に覆い被さる夫を必死に両手で押し退ける。
「ちょっと!!朝から窒息させる気!?」
私が肩で息をしながら夫をキッと睨むと、奴は嬉しそうにヘラッと笑って私をギュゥッと抱きしめた。
「だってなっちゃんが可愛過ぎるからいけないんだよ。あー朝からなっちゃんの可愛い寝顔が見れて幸せ!」
更にもう一度ぎゅっと抱きしめて、おデコにちゅっとキスをする夫を呆れ顔で見つつ、妙に焦げ臭い匂いに思わず溜息を吐く。
「ねぇ、なんか焦げてる」
「え?……あっ!!!目玉焼きがっ!!!」
そう言って、慌ててエプロンをした夫が部屋を出て行く。
その後ろ姿を呆れながら見つつも、ふと口元が緩んだ。
……───私の夫は、私の元ストーカーだ。