駅までは同じ道だから、必然的に茜くんと2人きりで通学路を歩いているわけだけど。
…なんだか、緊張するな。
久しぶりに、茜くんと喋ったわけだし。
「茜くんって、どうしてそんなに勉強してるの?」
「え?」
「いや…何か、目標とかあるのかなって」
少しでも、長く一緒にいたくて。
いつもよりゆっくりの歩幅で歩きながら、茜くんに聞いてみる。
茜くんはすこし黙って前を見つめて、何か考えているようで。
それから、口を開いた。
「…医者になりたいから」
「お医者さんになるの!?す、すごい…」
思っていたよりもはっきりした、そして大きな目標に、思わず驚いてしまう。
すごいなぁ、もうそんなことまで決まってるのか。
私なんか、何になりたいか全然決まってないや…。
「だからそんなに勉強してるのかぁ…。
すごいね、もう将来の夢が決まってるなんて」
なんだか急に、茜くんが遠くに感じる。
すこし手を伸ばせば届くくらいのこの距離が、果てしなく遠い。