「…ばかだって、嫌いになってないの?」


「はぁ?お前がバカなことなんて今さらだろ」


「そ、そっか…」


「……ほら、教えて欲しいの?欲しくないの?」




意地悪に口角を上げて、わかりきった答えを求める茜くんが。

意地悪言いつつ、いつもちゃんと助けてくれる茜くんが。


…好きだなぁ。




「教えてください!」

「ん、じゃあやるぞ」



俺は厳しいからな、なんて念を押して、茜くんは教科書を開いた。



昼休みが終わるまで、茜くんは私の隣に座っていて。

意味がわからなかった教科書の解説も、茜くんが教えてくれたおかげで理解できた。



…たまに、茜くんの横顔に見とれていたことがばれてしまって「聞けよ」なんて怒られてしまったけれど。


こんな幸せなことが起こるなら、留年の危機だってラッキーだなぁ、なんて思ってしまうよ。