「…まだそんなとこやってるのかよ」
ガタン、と隣の椅子が音を立てて引かれて、どかっと隣に座った彼と、上から降って来た呆れ声。
ふわりと柔らかくセットされた黒い髪に、紺色のカーディガン。
腕まくりした腕には、黒の大きめな腕時計。
「あかね、くん…」
茜くんは私の手元のノートをちらりと見て、私の手からシャーペンを奪った。
「ここ違う。この問題はこの公式使うんだよ。
ほら、求めるものが違うだろ」
私のノートを見て、さらさらと公式を書き込んでいく、茜くんの綺麗な手。
右上がりの、茜くんらしい綺麗な文字。
「なんで、」