……諦めた方がいいんだろうか。



入学式の日、私の腕を掴んだことなんて、きっと彼は覚えてない。

きっと人違いだっただけで、記憶の片隅にもない。


私はあの時からずっときみのことを目で追って、遠くにいるきみに憧れていたから。





だから目が合った瞬間、3秒間で、心の中のピンクが溢れてしまって。


魔法使いみたいなきみに、恋をしてしまったわけだけれど。




でも、やっぱり。



何を言ったって素っ気なくて、ぶっきらぼうで、冷たくて。

それなのに本当は優しくて、電車で絡まれた時も、夜につけられた時も、いつも私のことを助けてくれて。



そんなきみのこと、諦めるなんてできないよー…。





じわり、と浮かんだ涙。

こんなことしてるからダメなんだ。

茜くんのことばっかり考えてるから、勉強できないんだ。

だからもっと、茜くんに嫌われちゃうんだ。




……でも、だって、それでも。


私の心の中、ほとんど全部茜くんが占めてるから。

いつの間に私、こんなに欲張りになっちゃったんだろう……。