「…桃ちゃんは、有村くんのことが好きなの?」
すると、突然そう言った雪音ちゃんにじっと見つめられる。
周りの人たちも興味津々に聞いている。
…というか、わかりきったことだと思うけど。
「…うん、好きだよ」
「そう、なんだ…」
少し、目を伏せて。
斜め下を見ながら呟いた雪音ちゃんに、少し胸が騒いだ。
「雪音ちゃん…?」
「ううん、なんでもない!
…有村くんはどんな人が好きなの?」
それは私も聞きたいような、聞きたくないような…。
怖いなぁと思いつつ、それでも気になってしまってそっと茜くんを見つめる。
「頭良くてしっかりしてて、大人っぽい人」
茜くんの言葉は、どう考えたって私と正反対で。
というか私を避けるためにそんなこと言ったんじゃないかってくらいで。
雪音ちゃんの表情はなんだか少し、嬉しそうに見えた。
「そっか〜、あはは!
じゃあ私も…頑張って大人な女になるね!」
何だかみじめで、みんなに見られてることがさらにみじめで。
泣いてしまいそうなことに気付かれないように、へらりと笑ってみせる。