「え…」


「冷たくない?女嫌いって噂もあるし。
やっぱりイケメンだから?頭いいから?」



少し遠くの茜くんの方を見ながら聞いてくる郁人くんに、少し目を伏せる。


茜くんの、好きなところなんて。
そんなのたくさんあって、うまく言えないけど。




「…冷たくないよ。本当は優しいんだよ」


「そう?」


「茜くんといると、心の奥がぽかぽかするの。

綺麗なものを見つけたら茜くんに見せたいし、面白いことがあったら茜くんに話したい。

あっそ、って言われるだけかもしれないけど、それでも話したい。

茜くんは私のこと好きになってくれなくても、私は茜くんのこと好きでいる時間が幸せなの」




そりゃあもちろん、辛いこともあるけど。

冷たくされたらそれなりに寂しいし、他の女の子と仲良くしてると心の奥がモヤモヤするし。

それでも、茜くんを好きになって、幸せな気持ちの方がずっと大きいから。


だから私は、冷たくて温かい。

そしてぶっきらぼうで優しい彼のことを、知れば知るほど好きになってしまうんだと思う。