「ユリ、スミレ、数学できる…?」
放課後、帰ろうとしているふたりに数学の教科書を見せる。
と、スッと目をそらすユリとスミレ。
「ねえってば…!」
「…いや、うーん…私も結構ギリギリだし人に教えられるほどできないっていうか…」
「私も自分の勉強で手いっぱいっていうか…」
……まあ、そうだよねえ。
ただでさえ今はテスト前なのだから、人に教えるよりも自分の勉強をしなくちゃいけないわけで。
というかそもそも、私が言えたことではないけれどユリとスミレもそんなに勉強が得意な方ではないし。
仕方ない、1人で頑張るかぁ…。
「もーもちゃん!」
と、教室のドアの方から大きな声が聞こえて、クラス中の視線が入り口にいる彼と私の両方に向けられる。
「郁人くん!」