天空side

「プリント提出した人からHRを終わりにしまーす。」


担任がプリントをペラペラと掲げる。

゛体育祭で参加したい種目゛か…。

そのプリントにはそう書かれていた。


うちの体育祭は季節ごとで自分の誕生日の季節が同じ人と同じチームという少し変わったルールで行われる。


ちなみに私は春生まれ。棗ちゃんも春生まれで4月に誕生日を聞いた日はすごく驚いたし、すごく嬉しかった記憶がある。


「天空!何出る??」

「私は借り物競争かな?」


借り物競争は体育祭の種目の中で一番楽な種目という噂もあるので運動が得意でない私はそれを希望した。


「借り物か!楽しそうだね!」

「棗ちゃんはリレーの代表?」

「部活で走れって言われちゃってさ〜。」


クラスの女子で一番運動が得意な棗ちゃんは体育祭へのやる気は私とは比にならない。


しかも、棗ちゃんの所属する陸上部はリレー代表絶対参加というルールがあるようで、棗ちゃんはプリントに大きく リレー。 と書いていた。


「流石棗ちゃんだね〜。」

「ルールだしね。さ!部活早く行きたいし!
これ、提出しに行こ!」


今日も元気いっぱいな棗ちゃんは楽しそうにそう言った。私も急いで借り物競争と書いて提出する。


「じゃーね!天空!」

「部活、頑張ってね!」

「ありがとう!」


棗ちゃんと教室で別れる。
棗ちゃんはもちろん部活。帰宅部の私は水曜日と土曜日のバイトのある日以外はそのまま家に帰る。


下駄箱で靴を履き替える。


「あ。」


ふと、彼の事を思い出す。


(蒼の事、待ってようかな…。)


帰宅部の私達は時間があった時だけ、いつも一緒に帰っていた。特にどちらが誘う訳でもなく自然についた習慣だった。だから、蒼の事を待っていたりとかはしたことがなかった。


一人より二人の方がいい。


ただ、それだけの理由で一緒に帰っている。
ただ今日は何となく、蒼を待ってみようかな。


私は蒼の事が少し心配だった。


(ちょっと機嫌悪かった…よね?)


一度履き替えた靴をもう一度履き替える。