6組のある3階に着く。まだHRをしていた。


(あ、朝倉先生…。)


朝倉先生は前で皆に話をしていた。
授業とは違いラフな感じの先生も素敵。


「終わりまーす。」


先生の号令を合図に教室から生徒が出て来る。


「あれ、天空?」

「蒼、帰ろう?」


出てきた蒼はちょっとだけ驚いた顔をして私を見つめた。


「えっ待っててくれたの!?」

「待ってみた…?」

「……可愛い!!」


そう言うと蒼は私を抱きしめた。


「ちょっと!」


私もそうは言ったけど、内心嬉しかった。


(良かった。蒼、いつも通りだ。)


「おーい、八坂。付き合うのはいいがイチャつくのは帰ってからにしろー。」


(朝倉先生ッ!?)


突然出てきた朝倉先生が教室から顔を覗かせて私達に言った。


「付き合ってません!!」


何故か私は凄く慌てながらそう言い、蒼の腕の中から抜け出した。


「…?付き合ってないの?」

「はいっ!」

「天空ー!!」

「あ。一ノ瀬…さん?で合ってる?」

「えっ…?」


まさか、先生が私の名前を知ってるの?
胸がとくんと鳴る。


「あれ、違った?ごめん、、」

「あ、合ってますッ!でもどうして名前…。」

「実は、明日から小野寺先生の代わりに2組の担当する事になって…さっき覚えたんだ。」

「え、代わるんですか?」


嘘…嬉しい!


「入院が長くなったらしい…。」


小野寺先生、入院してたんだ。喜んでしまった事を反省した。不謹慎ですみません。でも、でも…もっと先生の授業が受けられるんだ。

そう思うと凄く嬉しくて堪らなかった。
どうしても表情がにやけてしまう。


「そうなんですね。」

「だからよろしくね。一ノ瀬さん。」

「はいっ!」


先生がまたニコッと笑う。目を少しだけ細めて笑うのが凄く素敵だ。綺麗。


「ちょっと…!天空!帰るよ…!」


置いてけぼりになっていた蒼が間に入ってくる。
そして、私の手を引っ張った。


「ちょ、痛いよ…!」

「じゃーな、朝倉!」


私はろくに先生に挨拶も出来ないまま、蒼に手を引かれて教室を後にすることになってしまった。




「蒼…!離して…!」


校門の近くまで来て、やっと蒼は私の腕を話してくれた。


「天空は俺を待ってたんじゃないの?」

「そうだよ。だけど何も引っ張ることないじゃん。…先生に挨拶もできなかったし。」


私は蒼を睨む。蒼の力は思っていたより強くて、まだ蒼に掴まれていた場所が痛い。


「先生、先生って…。何?朝倉の事好きなの?」

「…はっ!?そ、そんな事ないよ!」

「あっそ、でも無理だよ。朝倉は。」


分かってる。
私には高嶺の花。それに先生だし。だけど…


「分かってるよ…でも…。」

「だって、朝倉には…!」




蒼の言葉に私は耳を疑った。



先生に恋なんかしなければ良かった。

今でも心の底からそう思う。

どうして、どうして、初恋なのに。

恋って楽しいばかりだと思ってた。