2話「取り引き」
とても傲慢な人だ。
自分を片腕で支えながら、翠を指名した彼をそう思っても見てしまう。挨拶程度で、ほとんど会話もしたことがないのに、どうして自分が指名されなければいけないのか。理解が出来なかった。
助けを求めるように支店長である岡崎を見つめるが、小さく頷くだけだった。翠は「そんな、、。」と心中で叫んでいたが、仕方がない事だとはわかっている。ここは、ホストクラブやキャバクラではない。スタッフが常連客の担当になることは多いけれど、他のスタッフが対応する事も多いのだ。
ここは諦めるしかないと、翠は決心した。
「お客様、助けていただきましてありがとうございます。それでは、お部屋にご案内させていただきます。」
翠はさりげなく彼か体を話、しっかりとお礼を伝えて頭を下げた。和装の男性は「ああ。」と満足そうに頷き、翠の後に続いた。