迎えに来た部下に礼を言い、受け取ったタオルで翠を包んだ。
 彼女が温まれる場所へ早く連れていきたかった。この場所から一番近い所。


 「もう少し我慢してくれ。もう楽になるから。」


 冷えきった顔に張りつく濡れた髪を、丁寧に避けて顔を片手で包み込む。色は、そう優しく呟きながら翠を見守り続けた。


 彼が向かった先は、色の自宅だった。





 
 自宅に付くとすぐに暖房を入れた。
 湯船に浸からせたかったが、翠はまだ起きる様子もなかった。寝室に向かい、タオルの上に寝かせる。少し戸惑いながらも、色は翠の浴衣の帯に手を掛けた。
 
 濡れた浴衣のまま寝かせるわけにもいかない。なるべく、後ろ向きに座らせて正面は、見えないように脱がせていく。濡れて汚れた浴衣などを脱がせていく。徐々に素肌が目に入る。もともと、色は白いが今は更に青白くなっている。長襦袢も濡れていたので、仕方がなく脱がせる。彼女は下の下着だけの姿になってしまうがタオルで水を拭き取った後、すぐに色の長いTシャツを着せた。

 その時、翠を支えていた手に、他の肌と感触が違う部分がある事に気づいた。
 色は、何か着いているのかと気になり、彼女には悪いが服を捲って確認した。

 すると、左胸の下の、長細い痣があったのだ。古傷のようで、今は大分薄くなっているが、それでも肌質は変わってしまっているようだった。

 色はすぐに服を戻して、翠をベットに寝かせた。布団を掛けて、ベットの脇に腰を下ろし翠を見つめる。
 

 「おまえだったのか………。どうして………。」

 
 色は、目を細めて翠を見つめる。
 起こさないように、軽く額にキスを落とした後、色は脱がした浴衣をもって部屋を出た。

 冷たくなった緑色の浴衣を、手が濡れるのを忘れて、ただじっと見つめていた。




 「エメル、なのか………?」