「なんだ………なんか言いたい事でもあるのか?というか、今日のその顔はどうしたんだ?」
 「え……なんか、変ですか?」


 自分の顔を撫でるよう触れながら焦って色に問い掛ける。片想いとはいえ、好きな人に変な顔を見られてしまうのは避けたい。鏡を見ようとする前に、色は指を差して教えてくれた。


 「目の下のくま。どうしたんだ、寝不足か?」
 「えーと、それは、悩み事というか考え事をしていまして……。」


 今朝、しっかりとコンシーラーで隠したのに、と思いながら翠は言い訳を彼に伝えた。しかし、上手く伝えられなかったためか、色は苦笑を見せて、申し訳なさそうに翠を見つめていた。
 その表情を見て、翠はハッとして焦って色に早口で伝えた。


 「冷泉様のせいじゃないです!……もちろん、悩んだりもしますけど、寝不足になった理由は冷泉様じゃないので、心配しないでください!」


 色は、自分のせいで翠は寝不足になったのだと考えていると、翠は焦ってしまったのだ。彼の事を考えない日はないし、あと1ヶ月でこうやって会えなくなるのか思うと、苦しくなってしまう。だが、それとは別に考えなければいけないこともあったのだ。


 「………そんなに焦るな。わかったから。」
 「……すみません。」


 色に頭をポンポンと優しく叩かれると、きゅんとして落ち着きを取り戻した。大好きな人に頭を撫でられると、どうして安心してしまうのだろうか、と翠は不思議に思う。もっと触れ合っていたいとさえ、感じてしまう。
 けれど、そう思うのは色だから、なのだと翠はわかっていた。


 「じゃあ、誰の悩みごとなんだ?もしかして、告白でもされたか?」
 「えっ……………!?」

 
 小さな悲鳴のようや声を出して驚く翠を見て、色も目を開いてビックリしていた。
 (最近、こういう事ばっかりだなぁ。すぐに顔に出ちゃうのなんとかしたいよー!)と、泣きそうになりながら、翠は心の中で自分の行動を反省してした。


 「おまえ、モテるだろ。」
 「な、何でですか!?それは冷泉様ですよ!」
 「俺は社長だから言い寄ってくる奴が多いだけだ。…おまえは、その容姿だからな。」
 「………そうですね。確かに目立つので。」


 翠は、自分の髪を触りながら、苦しげに微笑んだ。日本人にはない、金色でふわふにカールした髪に、碧眼。肌の色も外人ほどではないが、色は白い方だった。外国人に見られる容姿で、日本人の名前に、会話は日本語。
 興味をもって近づく男性は多かったかもしれない。