翠はどう説明していいのかわからなくなり、少し戸惑ってしまった。告白してフラれたという話はしなくていいと思いつつも、それ以外でどう説明すればわかってくれるのかと、考え込んでしまったのだ。
 すると、困った顔を見せた後に岡崎が「もしかして。」と、話しを続けてくれた。

 
 「もしかして、失恋しましたか?」
 「………え、えぇ!!なんで、わかったんですか?!」
 「やはりそうでしたか。」

 
 翠の反応で、納得した様子の岡崎を見て、「また自分で話してしまった!」と、手で口を抑えたが、それは後の祭りだった。
 

 「一葉さんが、冷泉様に好意をもっていたのは気づいていたので。いつも、可愛らしい格好をしてお会いしてましたよね?」
 「それは、料亭に行くからで!」
 「スタッフの間では、綺麗になったと話題でしたし、この間もお客様に連絡先を聞かれていましたよね。恋をすると綺麗になるといいますし。」


 岡崎の言う通り、最近何人かのお客様に連絡先をを聞かれたり、食事に誘われる事があったのだ。昔からスタッフに対して、そういう誘いがあることは多かったし、翠も何回かはあった。だか、最近は頻度が多かったのだ。
 VIPルームで二人きりになった時に迫られた時は、とても驚き怖い思いもした。その時に物音を聞いて駆けつけてくれたのが、岡崎だった。
 それから、心配して接客中も気にして見てくれていたのだ。


 「ーっっ!!……岡崎さん、それ以上は恥ずかしいので、止めてくださいー!」
 「すみません。…では、話してくれますか?」
 「………わかりました。」


 岡崎はたどたどしく話す、色の話を頷きながら真剣に聞いてくれた。信頼できる上司であり、唯一職場で冷泉様とのことを知り、応援してくれた人だ。 誰にも相談せずに悩んでいた事でもあったので、岡崎が話しを聞いてくれたことで、翠は心が少し落ち着いてきていた。


 「なるほど。そんなことがあったのですね。」
 「はい………。」
 
 簡単にだが、色との出来事を話すと、岡崎は真剣な表情から一転、にっこりとした微笑みで翠を見て問い掛けた。